COLUMN

すべてがわかる!ミラノデザインウィーク 2025最新レポート(全3回)

Vol.1 ミラノサローネってなに?


-ミラノサローネとは

ファッションとアートの都、ミラノが、年に一度「世界のデザインの首都」となる瞬間があります。それが「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」です。家具とインテリアの祭典であり、創造と未来の実験場です。

ミラノサローネは、1961年にイタリア家具工業連盟(FederlegnoArredo)によって創設されました。当初の目的は、「高品質なイタリア製家具の輸出促進」。第1回はミラノ市内の展示場で開催され、出展者は328社、来場者は約12,000人でした。
1970年代に入ると、ミラノサローネは国際色を強め、世界中のバイヤーやデザイナーが集う場になりました。同時に、モダンデザインの潮流が加速し、プラスチックなどの新素材や、ミニマリズムなどの表現が注目を集めるようになります。1980年代に入るとミラノサローネにアートやコンセプト性を重視した展示が登場し始めます。そして、会場外のミラノ市内でも展示やイベントが増え、「フオーリサローネ(Fuorisalone)」が自然発生的に誕生しました。「フオーリ(fuori)」とはイタリア語で「外」という意味で、つまり、ミラノサローネの会場“外”で行われるデザインイベント群の総称を指します。

2005年、建築家マッシミリアーノ・フクサス(Massimiliano Fuksas)による巨大な新展示場「ロー・フィエラミラノ(Fiera Milano Rho)」へ会場を移し、より多くのブランドが出展でき、世界中からの参加者を受け入れるインフラが整備されました。今では、デザインの最先端を世界に示す“バロメーター”としての地位を確立。出展企業は2,000を超え、世界180カ国以上から30万人以上にのぼる来場者が集まる一大イベントへと成長しました。

-フオーリサローネの魅力

ミラノサローネ期間中、会場だけでなく、ミラノ市内のあらゆる場所がデザインの舞台になります。これが「フオーリサローネ(Fuorisalone)」です。
ギャラリー、ブランドショップ、歴史的建造物、カフェなど、そこかしこで、期間限定のインスタレーションや展示、ライブイベントが行われ、街全体が一つのアートワークと化します。
中でも注目を集めているのが、キュレーターのValentina CiuffiとJoseph Grimaによって2018年に立ち上げられた「アルコーヴァ(ALCOVA)」です。彼らは、ミラノの歴史的建物や廃工場など、普段は立ち入ることのない空間を活用し、デザインと社会、環境、テクノロジーのスクランブルに立つプロジェクトを展示しています。これにより、ALCOVAは単なる展示会にとどまらず、都市の再生や文化的対話の場としても機能しています。

また、今年注目を集めたのが「Capsule Plaza」です。クリエイティブディレクターのアレッシオ・アスカリ(Alessio Ascari)と建築家ポール・クルネ(Paul Cournet)が主催し、キュレーションを務めるこのイベントは、展示会と集団展示のハイブリッド形式で、インテリア、建築、ビューティー、テクノロジー、クラフトなど、さまざまなクリエイティブ分野のデザイナーや企業が参加し、業界と文化を橋渡しする大胆で多感覚的なキュレーションを展開しています。

今年も、スウェーデンのデザインブランドHemが、創立10周年を記念して、アーカイブ展示とフォルマファンタズマ(Formafantasma)による新作のインタラクティブなショーケースを披露したり、カリモクがKarimoku New StandardとMASによるサステナブルな未来をつなぐ家具を展示したり、デザインスタジオHYDROが、サビーヌ・マルセリス(Sabine Marcelis)、ステファン・ディーツ(Stefan Diez)、セシリエ・マンツ(Cecilie Manz)、ケイジ・タケウチ(Keiji Takeuchi)、ダニエル・リーベッケン(Daniel Rybakken)という贅沢な顔ぶれでコラボレーションを行い、革新的な家具や照明を発表するなど大きな話題となりました。

普段は静かな教会の中庭が、幻想的な照明インスタレーションで彩られる。あるいは、廃工場の跡地に未来のキッチンが突如現れる。そんな驚きが、ミラノ中で巻き起こります。

-サローネサテリテの魅力

ミラノサローネのもう一つの魅力が、若手デザイナーの登竜門である「サローネサテリテ(SaloneSatellite)」です。
サローネサテリテは1998年に創設されたミラノサローネの公式サテライトイベントです。35歳以下の若手デザイナー、またはデザインスクール、大学の学生のみが出展可能で、「未来のデザインは若者たちの中にある」をコンセプトとしています。世界各国の若き才能が自らのプロトタイプを展示し、世界に向けて発信する場であり、マルセル・ワンダース(Marcel Wanders)、セバスチャン・ヘルクナー(Sebastian Herkner)など、ここからキャリアを飛躍させた有名デザイナーも少なくありません。

-エウロルーチェとエウロクッチーナ

ミラノサローネの期間中、隔年で開催されるのがエウロルーチェ(Euroluce)とエウロクッチーナ(EuroCucina)です。
エウロルーチェは建築照明、装飾照明、アウトドア照明、スマート照明、LED技術など、あらゆる照明の最先端が展示され、建築家、デザイナー、照明プランナーにとっては必見の展示です。エウロクッチーナは最新のキッチン家具、ビルトイン家電、収納システム、素材、機能性の高いソリューションなどが展示され、同時開催される FTK(Technology For the Kitchen) では、スマート家電やキッチンIoT技術も紹介されます。
今年はエウロルーチェが開催されましたが、デザインと技術が融合した革新的な照明が多数紹介され、来場者に新たなインスピレーションを提供しました。

-なぜ“行く価値”があるのか?

ミラノサローネは、単に“製品”を見る場ではなく、「これからの生活」「これからの美意識」を体験する場です。
プロも一般の人も、デザインに少しでも興味があるならば、きっと刺激を受けるはずです。そこには、まだ誰も見たことのない“暮らしの未来“が広がっています。ミラノサローネとは何か?それは、一言で言えば「世界が恋をするデザインの祭典」です。デザインは、家具や空間を通して、私たちの日常を変える力を持っています。その力を、五感で感じることができるのが、ミラノサローネという特別な1週間なのです。

さて、次回は今年注目の展示についてご紹介します。

SOGOKAGUでは下記日程にて「ミラノデザインウィーク2025最新トレンドレポート」と題したセミナーを開催します。実際に現地を訪れたスタッフからの生のレポートをお届けします。

「2025-26 NEW PRODUCT EXHIBITION」
ミラノデザインウィーク2025最新トレンドレポート

大阪会場:5/30(金)11:00~11:30、14:00~14:30
※大阪会場の14:00~は定員に達しましたので受付を終了しております。
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東京会場:6/13(金)14:00~14:30
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