複雑な情報を細やかに制御する手法で建築やデジタルアートの設計を手がける、浜田晶則さん。
チームラボアーキテクツのパートナーとして手がけられた作品や
最近の建築作品についてお話をうかがいました。
-2014年からチームラボアーキテクツのパートナーを務めておられますね。チームラボはプログラマ、エンジニア、CGアニメイターなどさまざまな専門家で構成されていますが、そこでの役割について、最近の作品とともに教えていただけますか。
浜田さん(以下:浜田):建築部門である、チームラボアーキテクツのパートナーとして参加しています。チームラボでは、ディレクターが決定したことをエンジニアがそのまま実装するというような関係性ではなく、プログラマ、エンジニア、CGクリエーター、建築家といった手を動かして考える人たちが主体となって作品を制作しています。
たとえば昨年に上海で発表した作品「Microcosmoses」は、金沢21世紀美術館でもプロトタイプを展示した作品ですが、ここでは無数の光の玉がレールの上を走っています。鑑賞する人が近づくと光が強くなったり速さが変わったり、といったインタラクションをしていく作品です。光の玉は一定の車間距離をとって渋滞を起こさないように、動きが制御されています。レールはとても複雑な形をしているように見えますが、限られたパターンのなかで、いかにダイナミズムを生みだすかに挑戦しました。

Microcosmoses ©チームラボ

-チームラボの作品制作において、他の建築設計やインテリアデザインとは違う工夫を教えていただけますか?
浜田:人とのインタラクションをとても大切にしています。例えばデジタルで光を制御したり、モーターなどの機構を使うことで、作品と鑑賞する人との関係が双方向的に変化していくものです。
たとえば広い空間に大がかりな設備をつくって人々を楽しませるというディズニーランドのような遊園地は、20世紀型エンターテインメントのひとつの頂点だといえるでしょう。しかし21世紀のエンターテインメントはデジタルによって現実を拡張する体験で、もっと小さな空間でも、都市型の場でも実現することが可能だと考えています。実際にジェットコースターなどに人を乗せて動かすのではなく、映像や光を動かすことでそれに近い、またはある意味ではそれ以上の体験が得られます。インターネットでメディアが双方向になったように、デジタルによる制御によって、体験も双方向的に広げることができると考えています。

森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス ©チームラボ

聞き手:牧尾晴喜 HARUKI MAKIO
建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。