Design to Shape

産学連携で生まれたデザイン
Edition No.4:VIST
京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室との取り組み
VISTは京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室との産学連携で生まれた最初のプロダクトです。取り組みを始めたのが2016年。京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室の学生たちにとっても、我々にとっても初めての試みで、最初は手探りで始めたプロジェクトでした。最初に大学側がはじめたのが「SOGOKAGUらしさ」の要素を構造化することでした。当時SOGOKAGUが販売していた商品をすべて拾い出して、SOGOKAGUの特徴を導き出す作業がはじめられました。学生たちが導き出したSOGOKAGUらしさは、「落ち着き」と「存在感」でした。当時の商品から感じられる高級感、安定感、なめらかさといった要素から「落ち着き」を、立体感、シャープさ、エッジの効いたラインといった要素から「存在感」というキーワードを導き出します。SOGOKAGUらしさの要素を構造化した学生たちが次に取り組んだテーマが、新たな方向性の造形展開でした。そこで策定されたテーマが「薄さ」の追求だったのです。
骨盤をイメージしたデザイン
SOGOKAGUが得意とするモールドウレタンでは、成型方法の都合上、薄く、座り心地の良いイスの実現は高度な技術が必要になります。学生はその薄さのモチーフとして骨格からインスピレーションを得ていました。身体を支え、内臓を守る骨盤をイメージしたデザイン。驚くべきことに、初期のスケッチですでに特徴あるキャンチレバー構造のVISTの造形が描かれていました。当時、「WIST」と名付けられたその商品は、骨盤のおおまかな要素を残しつつ、骨にはない「優しさ」や「柔らかさ」といった要素を付け足し、SOGOKAGUのアイコンとなるイスを目指してブラッシュアップを続けます。

THE PROCESS

デザインの実現に向けて
最もこだわったのは、やはり肘から背もたれへと一続きに繋がる形状でした。コントラクト家具としての強度を保ちながら、背にもたれかかると軽くベンディングする座りやすさも追求しました。この一見矛盾した複雑な造形を実現するため、DESIGN LABOで原寸モデルを作り、試作モデルでのデザイン検証と強度試験を繰り返しました。また、さらに難しかったのが張りでした。発泡スチロールの原寸モデルで張りの検証を繰り返し、全体の造形のイメージを崩さないように、この時初めて、当時では珍しいコンシールファスナーを採用します。

アイコンとなるイスの誕生
実用強度を保ちながらの薄さの追求、自然な縫製ラインを入れるための張りの技術。いずれも学生たちの想いを形にするには高いハードルでしたが、こうして試作と検証を繰り返し、ブラッシュアップしながらVISTは完成しました。肘から背もたれへの流れるような曲線、当初の目的であった薄さの追求、造形を損なわない張りの技術。さらに強度面でももっとも不安が残る背もたれの強度試験で1200Nまでの数値に耐えうる仕様を実現しています。まさに、学生たちとSOGOKAGUのこだわりと技術力が生んだ、SOGOKAGUのアイコンとなるイスが4年の月日をかけてついに誕生したのです。