COLUMN

2019年5月17日

家具と素材を活かした空間のつくり方 Vol.2
居心地のよさを追求した飲食店舗:博多廊 法善寺店


デザイナー 松本直也
博多廊 法善寺店
パリ発のバッグブランド「コート&シエル(コートエシエル)」や飲食店舗「博多廊」をはじめ、
多くの空間や家具デザインを手がけている松本直也さん。
家具や素材感を活かしながら、人々が集う居心地のよい空間を生みだすヒントをうかがいました。
大阪・法善寺にある和食店「博多廊 法善寺店」の内装も手がけておられます。大阪の繁華街にあるお店ですが、外観でのポイントを教えていただけますか?
松本さん(以下:松本)
ふだんは、大きく目立つようなお店のサインをつくるタイプではないんですが、それだとこの立地では負けてしまうんです(笑)。だから、屋号のサイン計画を大きくし、また、昼でもしっかり視認できるようにこだわりました。また、海外からの訪日観光客もとても多いエリアなので、パッとみて飲食店とわかるように、木の格子をつかっています。お祭りのイメージです。夜はアッパーライトでライティングもしていますが、昼の間も、素材や建物自体で飲食店という雰囲気を醸しだすようにデザインさせていただきました。消防関係の規制もとても厳しいですが、使えるところでは木を使うなどの工夫をしています。
博多廊 法善寺店
座席や空間の構成で工夫したところを教えていただけますか。
松本
飲食のフロアが1階から4階まであるんですが、フロアごとに、食事をするコンセプトそのものを変えているんです。1階はキッチンとカウンター、2階と3階は大人数も対応できるテーブルや座敷・掘りごたつの席があり、4階は1フロアまるまるをひとつの部屋にしています。完全にプライベート空間です。ほかのお客様はもちろん、従業員の方も料理を提供するとき以外は入ってこない動線になっています。
博多廊 法善寺店 4階 VIPサロン
とても面白い空間ですが、クライアント様からのリクエストだったんでしょうか?
松本
どんなお店にしていくかという構成段階からご一緒させていただいていて、他の案もあったんです。厨房を2箇所にしたり、そもそも下の階と上の階で店舗自体を2つにわけようか、といった話もありました。最終的には、立地も考慮して、芸能人や芸人の方々にも周囲の目を気にせずに快適に過ごしていただける空間をということで、ビルの高低差を活かしてこのような空間をつくりました。
椅子や家具を選ばれる際に、どのようなことを重視されますか。
松本
たとえば飲食店でも、お客様の出入りが多いカフェだったりすると、3時間も4時間も座っているとNGになりますよね。3時間座るための椅子と1時間だけ座るための椅子だと、当然、椅子の座り心地はちがうんです。その空間や家具が実際にどのように使われるかということを、設計段階から深く考えていきます。もちろん、見た目や使いやすさといったデザインが良いのは大前提、という感じですね。
博多廊 法善寺店 4階 VIPサロン

PROFILE

松本直也NAOYA MATSUMOTO
デザイナー/ 株式会社松本直也デザイン主宰
大阪府出身。成安造形大学卒業後、 野井成正デザイン事務所勤務を経て
2013年 松本直也デザイン設立。
(2017年 株式会社松本直也デザイン設立)
心踊るコミュニケーションの創造を軸に国内外の様々なクライアントと
プロジェクトを進行中
聞き手
牧尾晴喜HARUKI MAKIO

建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。

このコラムでは、人々が集う居心地のよいインテリア空間をつくりだしている、国内外で活躍されているデザイナーへインタビューをしていきます!

Photo / takeshi asano

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