Design to Shape

「背」のデザインにこだわったハイバックチェア
Edition No.2:STYLIA
しとやかさ、つつましさ、凛
スタイリアは、京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室との産学連携で生まれた3番目の椅子です。京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室との取り組みは2016年の5月まで遡ります。当初の目的は「相合家具らしさ」の共有。「相合家具らしさ」を言語化するために、学生たちによってこれまでの相合家具の商品をふたつのグループに分け、そこから「存在感」、「落ち着き」、「ハリ」という3つのキーワードを導き出します。さらに、造形的なアプローチとして「しなやかさ、延び」というコンセプトと、抽象的なアプローチとして「しとやかさ、つつましさ、凛」というコンセプトが生まれます。
女性の後姿をモチーフに
ふたつのコンセプトを元に、学生たちからスケッチ案が出されます。しなやかさやしとやかさといったコンセプトですので、動物や植物、人のたたずまいなどをモチーフにしたデザイン案が数多く出されました。その中に1点、椅子を後ろから見たデザイン案がありました。仮の商品名は「背格好」。「しとやかさ」というキーワードを「儚さ×色気」と解釈し、女性ならではの有機的でどこか陰のある「背格好」をモチーフとした椅子のデザインでした。私たちも日々、椅子のデザインを考えますが、普通は前から見た姿を描きます。車や電化製品など、私たちが日々目にするプロダクトの多くは正面から見ることが多いです。しかし、「背格好」をデザインした彼にとっては「椅子は後ろから眺めるもの」だったのです。確かに、椅子を正面から眺める機会は多くありません。リビングに置くソファなどならまだしも、いわゆるダイニングチェアやオフィスチェアなどは、圧倒的に後ろから見ることが多いです。後ろから見た姿が、女性の後姿のように美しい椅子。柔らかなラインと膨らみ、腰のくびれや凛としたたたずまい。初期のデザインからは、艶めかしさすら感じます。

THE PROCESS

想いの実現へ向けてイタリアへ
ブラッシュアップされた「背格好」は、その後「ミセス」と名付けられました。女性の後姿をリアルに再現したフォルムは、その輪郭を守りながらも生地の張りやすさや縫製ラインを考慮してデフォルメされ、木脚のデザインも背の輪郭の美しさを損なわないようにデザインされました。1/1モデルを弊社のデザインラボで削り出し、座りと張りの検証を繰り返しながら、商品化へ向けて動き出すことになります。ところが、美しさを追求したそのフォルムは、日本で制作するには高度な技術を必要とされました。そこで私たちは、ミセスの商品化へ向けて、イタリアの工房へと足を運びます。

座る人を美しく見せる椅子
イタリアでは、相合家具として初めて5軸のNC旋盤の削り出しを元に型を作成しました。有機的で複雑な木金混合の脚部もイタリアの確かな技術力があってこそ完成したものです。こうしてミセスは、その後スタイリアと名前を変え、世に出ることになります。大人の女性の後姿をモチーフにしたスタイリア。存在感がありながらスマートなその後姿は、つつましく、凛として、座る人を美しく見せるのです。