COLUMN

2019年6月28日

産学連携という新しいモノづくり。そこから創造された新しいデザイン。
-産学協同の取組みの成果がいよいよ市場へ


京都工芸繊維大学 × SOGOKAGU
京都工芸繊維大学の製品デザイン計画研究室とSOGOKAGUの5年間にわたるコラボレーションを経て、
このたびDESIGN LABO 発の新製品としてリリースされた『ヴィスト』と『フラッター』。
その製品開発の経緯や、産学連携という化学反応を通して生まれた貴重なシナジーについて、
担当である京都工芸繊維大学 木谷庸二准教授にお話を伺いました。

ゼロからスタートしたプロジェクト。
製品化に漕ぎ着けたことは、貴重な経験。

さまざまなモノづくりについて、単純にモノをデザインするということだけではなく、そのデザインをどのようにマネジメントするのか。それが、私たちのゼミ「製品デザイン計画研究室」のテーマです。たとえばある製品を、「どうすれば、より低資源でモノづくりができるのか」という課題について、素材や生産工程、利用シーンなど、そのモノに付随するさまざまなことも含めてトータルにデザインしていくという課題に取り組んでいます。
椅子が持つ本来の機能は、非常にシンプルです。それゆえ、学生にとっても取り組みやすさはあったと思います。しかも、実際に製品化される可能性があるというのは大きなモチベーションにもなるので、このプロジェクトに興味を持って参加する学生も数多くいます。とはいえ、5年前にプロジェクトがスタートした当初、学生たちには椅子のデザインに関するノウハウもなければ、その製造工程についての知識もありませんでした。ですから、今回の製品化までには数々の試行錯誤を重ねてきました。
このプロジェクトを通して、学生たちには驚くほどの成長がありました。日頃から多様なデザイン演習などは行っていますが、実際に製品化されることを目的にデザインに取り組むとなると話は別です。リサーチも必要ですし、マーケティングやブランディングの視点も要求されます。自分本位のデザインではなく、社会や市場とコミットすることを前提にデザインが製品へと磨かれていくプロセスを経験することは、得難い経験だったと思います。

京都工芸繊維大学
デザイン・建築学系 准教授
木谷 庸二

大切なのはモノづくりに対する
堅実かつブレない姿勢。

学生たちと時間をかけて取り組んできたデザインが、ようやく二つの製品としてリリースされるということを私自身も非常に喜ばしく思っています。そして同時に、世の中にどういう形で受け入れられるのかも興味深いですね。おおげさにいうなら、例えばヨーロッパなどで評価を得て、ヴィストとフラッターがエポックメイキングな存在となる――もしそんなことになれば、素晴らしいことですね。
現代はIoTをはじめさまざまな技術が進歩し、椅子というモノのありかたでさえ変化していく可能性があります。そしてそこから広がるビジネスも、これまでにはない展開が広がっていくかもしれません。そして、椅子というのはシンプルな家具でありながらも、歴史や文化が凝縮されたモノであり、記号性や象徴性を持ったモノでもあります。椅子をデザインするという行為には、難しさと、そしてまだまだ多くの可能性が残されているといえるでしょう。近代建築の巨匠と言われ、数々の独創的な椅子を世に送り出したことでも知られるミース・ファン・デル・ローエも、「一脚の椅子を作るのは、摩天楼を作るよりも難しい」という言葉を残しています。だからこそ今回のプロジェクトのように、時間をかけてより良い製品を世の中に送り出そうという堅実かつブレない姿勢こそが、非常に大切なのだと改めて強く感じました。
SOGOKAGU DESIGN LABO
NEW PRODUCT 01

VIST

モールドウレタン成型の可能性を最大限まで広げることで実現した、圧倒的な“薄さ”が生み出すデザイン。人間の骨格にインスパイアされたしなやかな曲線のフォルムが、包み込まれるような座り心地を感じさせます。シャープなダイキャスト脚もデザイン的な調和を生みます。

このビストという椅子は薄さと強度を
両立する意欲的なデザイン。

とにかく「薄さ」を感じさせるデザインにしたい。それが、ヴィストのデザインの原点にある発想です。モールドウレタンでありながら薄さを追求するという相反する条件を両立した、意欲的なデザインだと思います。デザインのモチーフになっているのは、人の骨や骨格。具体的には骨盤の形をエッセンスとして、包み込まれるような有機的なフォルムのデザインを展開しています。座面からひじ掛け、背もたれへと一体になって繋がっている形状が特徴です。このように一体化した形状は、薄さを活かそうとするとなかなか強度が保てないという課題があります。それをクリアしたのは、SOGOKAGUならではの高い技術力があったからこそ。私たちも、この椅子をデザインしていく際に、「一目見て、これはSOGOKAGUの椅子だ」とわかるようなものを作りたいと考えていましたが、このヴィストという製品はまさに現在のSOGOKAGUの技術力や品質力を象徴する、一つのキーとなるデザインとして昇華されたのではないかと感じています。
NEW PRODUCT 02

FLUTTER

女性の髪をデザインモチーフにしたアシンメトリーの背もたれが、艶めいた雰囲気と凛とした気品を感じさせる一脚。背もたれにまっすぐ座るだけでなく、横向きにもたれかかるように座るなど、左右非対称だからこその自由な座り方がコミュニケーションの広がりを演出します。

ただ、フォルムが美しいだけではない、
コミュニケーションを広げる新しい座り方の提案。

SOGOKAGUが提唱する「Meetalk」というコンセプトを体現するデザイン。横にもたれかかるような座り方もできるので、向かい合うだけでなく、隣り合わせに座ってもコミュニケーションが広がる、そういう使われ方をイメージしたものです。左右非対称の流れるような背もたれのデザインは、女性の髪をモチーフにしています。滑らかな曲線のフォルムで非常に柔らかでありながらも、凛とした存在感を感じさせる、そんなデザインです。実際にこのフラッターに人が座っている様子を見ると、何とも言えない独特の絵になる空気感を演出してくれる、そんな不思議な魅力のある椅子です。左右非対称の椅子は、ソファー系のものなどには比較的多くありますが、こういったいい意味での「崩した」座り方を提案したケースというのは、これまであまり存在しなかったのではないでしょうか。今回のリリースでは背もたれの右側が高いものだけですが、逆バージョンも展開することができれば、コーディネートの幅も広がって面白いですね。